「ロカルノ映画祭」のこと7

2009/08/11

『ワカラナイ』の評判は、すこぶるいいのだが、賞には結びつかないのではないかと思い始める。
いや、このことは、来る前から思っていたことで、だったらどうしてスイスくんだりまで来たんだということになるけれども、自作のプレミアに立ち会うのは、監督としての義務だし、それがコンペ出品とあらば、結果の出る最後までいるのも義務だと思っている。

しかし、辛い。
裁かれる側に回るのは、本当に辛い。
何とか紛らわそうとあの手この手を考えるのだけれども、いたたまれない気分に変わりはない。

川喜多のSさんが、訪ねて来た。
では、昼食でもと言うことになり、スーパーの近くのレストランへ行く。
レストランといっても、なんか食堂みたいな感じで、味も素っ気もない。
それでも、料理は、まあまあで、また息子は、カルボナーラ
ボクと奥さんは、昼の定食を食べる。
Sさんは、ショートパスタを食べていた。
色々と話し、今日帰国すると言うSさんと別れて、スーパーへ。
買い物を終えて、アイスクリームを食べて、ホテルに戻る。

また息子がプールに入りたいと言う。
それで、ボクもプールサイドで、息子の泳ぐ姿を撮影したりする。
「んー、ん」
でも、駄目だ。
気が付くと、落ち込んで、じっと手を眺めている。
どうすることも出来ない。
この日も、道行く人に声を掛けられて、
「あなたの映画は、ビューティフルだった! 素晴らしい!!」
と、感激して握手を求められたのだが、ピンと来ない。
「はあ…」
とか、日本語で、間抜けな声で答えるだけだ。
「な。帰ろうか」
と、部屋に戻ってから、奥さんに切り出す。
「そうなあー。帰ってもええけどな? キャンセル料発生するでぇ? おまけに、この時期、飛行機の予約、とれるやろか」
と、全く気のない言葉。
「そうだけどさ!」
と、言うには言うのだけれども、先が続かない。
で、晩飯。
息子は、カルボナーラで、ボクは、ペペロンチーノ。
「あんたら飽きずに、同じものばかり良く食べるなあ」
呆れ顔でボクらを見る奥さんを無視し、パスタをもりもりかっ込むのだった!
「美味い!!」