「ロカルノ映画祭」のこと6

2009/08/10

ロカルノと言うところは、この時期、暑い。
おまけに山に囲まれているせいか、突然、鉄砲雨が降る。
降ると、肌寒くなる。
その繰り返しだ。
息子をキッズコーナーに預けて、奥さんは、コンペ作品を、ボクは、見損なっていた『靖国』がかかっていたので、観に行く。
刀作りの職人さんが、随分前に亡くなった叔父さんに見えてきて、困った。
昔かたぎの職人に嫌な質問するんじゃないよと呟く。
最後の編集も不愉快。
後味悪く、合流した奥さんともロクに口も利かずに、FEVIへ。
コンペ作品。
EUGENE GREEN監督の新作。
この人とは、以前パリだったかでお会いしたことがある。ゴダールと一緒に映画を作っていた人らしいが、ボクは全然知らなかった。
ボクがこのロカルノで、受賞した年、彼もチョンジュの映画祭で作った短編作品が、コンペに出ていて、(短編三本の監督の中の一人)賞を貰っていた。
あの年、映画祭が終わり、事務局の車で、空港まで行き、飛行機を待っていると、ひとり、離れたところで、金豹のトロフィーの入った箱を抱え、手すりで外を眺めているEUGENEを見かけた。
声を掛けようと思ったが、そんな雰囲気ではなかった。
でも、声を掛けていたら、人懐っこい顔で、笑みを浮かべて、こたえてくれたと思う。
アメリカ人だが、パリ暮らしが永いらしい。映画を観ていて、なんて正直な人なんだろうと思った。
画作りは、ゴダール的で、アランレネのような演出が垣間見える。
客席から、何度か、笑い声が聞こえた。

劇場を出て、一旦ホテルに戻る。
息子が、ホテルのプールに入りたがる。
仕方なく、奥さんが連れて行く。
部屋で、カレーを作り食べる。
こちらで買った米がまずく、何を食べているのか判らない。
オリーブオイルの香りが口から離れないのだ。
こうなるともう駄目だ。
もう10年近く前になるけれども、初めて行ったカンヌでの記憶が蘇って来る。
その時も自炊で、オリーブオイルにやられて、食欲不振に陥り、ついに、何も食べられなくなり、ワインばかり飲んでいた。

9時からグランデ広場で、『起動戦士ガンダム1』の上映。
上映前に、監督の舞台挨拶があり、映画は始まった。
30年前の作品が、DCPで、鮮明によみがえった。
雨もなければ音とびもない。
美術品と同様、映画も劣化したものには修復をくわえることが出来るようになって、その当時の映像と音を復元することが出来る。
いや、それ以上か。
美人も、いつしか年老いていく。
それが美しいという人もいるかも知れないが、歳をとって、皺が増えるほうが、美しいということもある。
永遠の美など、ありはしないのだ。
だから、ボクの映画は、朽ち果てるに任せたいものだと、画面を観ながら思った。

終わって、グランデ広場のカフェで、一杯やって、ホテルに戻る。