『ワカラナイ』上映会+「首都圏高校生集会」ディスカッション


現在、深刻な不況の影響下、経済的な事情で満足に教育を受けることができない子供たちが増加しています。
そのような状況下、11/1(日)に、首都圏の定時制高校の生徒たちが中心となり、授業料の無償化を訴え署名活動を行う「首都圏高校生集会」を開催しました。当日は、署名活動の後、深刻な貧困の中で生きていく少年の姿をリアルに描いた映画『ワカラナイ』を上映、自身や仲間が困難な状況にある13名の高校生たちによるディスカッションを行いました。


──『ワカラナイ』を観てどうでしたか?

「胃が痛いです(笑)」

「最後のほうは感動しました」

「お母さんが辛いとか死にたいとか言っていたけれど、俺だって辛いんだよとか、何で俺ばっかりこんな辛い目に遭わなくちゃいけないんだよとか普通は思うと思うんだけど、どうにかしようとがんばっているのは、やっぱりお母さんを嫌ってなかったからだと思う。なんでこんな家庭に生まれたんだろうとか、こんなところで生まれたくなかったという思いもあるはずなのに、主人公はすべてをがんばって必死だったから、強いなと思った」

「主人公が弱音をはかなかったのは、やっぱり頼れる人がいなかったからというのもあるし、信じられる人がいなかったから。いつ自分たちがこうなるか解らない。もしかしたら私たちがこういう環境になっていたかもしれない、それとも明日そうなるかもしれない。お金のことばかり社会に問い詰められてしまうようになってしまう。そういういたしかたない現状があるけれど、ホームレスなどに偏見のあるいまの世の中と日本のなかで、貧困やお金のない若者たちがどういう思いで、どういう状況でそのようになってしまうのかが描かれている。そのような偏見が取り除けるかもしれない映画だと思いました」

「僕の母親は病気で、兄2人で支えてるのですが、主人公と重なる部分もあるかもしれないけれど、不思議とそうでもなかった。どんな状況でも、僕の母親はそういう悪いことに手を染めることを激しく嫌っていたので。でも考えさせられるところはありました」

「主人公はレジ操作で犯罪をしているけれど、親が病気で寝たきりで働いて、それで食いつなぐのがやっとみたいな状況で。それが発覚して友達のクラスメイトを突き放したりっていうシーンがあったけれど、もっと冷静に自分も対応したり、もっと周りの人が助けることも必要だと思うし。でも、どうしていいのかが解らないというのがいちばん大きなことだと思う」


──最後もお父さんに頼らないで、そこから離れていくでしょ、みんなだったらどうする?お父さん世話してよ、っていうふうにならない?

「でもお父さんとしては、今は平和な家庭を持っているわけだし、今頼ったらその家庭を壊してしまいそうだから、今は自分は頼らない方がいいと思ったんじゃないかな。その後ひとりでとぼとぼ歩いていったのは、とりあえず自分でなんとかしようということだと思う」

──どうしたらもうちょっといい状況になると思いますか?

「題名がワカラナイだし、どうしたらいいか解らない、主人公にも解らないだろうし、見ている僕にも解らないところが多い」

先生「おまわりさんが「君はサッカー選手を目指していて、夢があるじゃないか」という言葉にものすごいギャップを感じた。サッカーなんかできる状況じゃないじゃないですか。お金がないとき、食べるものがないときは、ほんとうにプライドを捨てるしかない。僕だったらお母さんの手を握り返さないで、結婚指輪を持っていってしまうと思う。そんなときに、おまわりさんが「娘の誕生日なんで」と出ていってしまう。周りの同級生にしろ先生にしろ、繋がりがなさすぎる。食べることもできない生活で、がんばってくださいって何をがんばったったらいいのか」

「でも、指輪を握り返したのは、そのままお母さんに天国に持ち帰ってもらいたかったからじゃないの?」

先生「それは解るけれど、死ぬほど腹が減っているときに、プライドを捨てることがどれだけ辛いか。自殺するしかないんじゃないか、そういう状況の時に、俺は指輪を握り返せるのかなって思った。ゆりかごから墓場までという社会じゃないってことだよね。母親が死んでも誰も助けてくれない。そんな世の中でいいのかって観ていてほんと頭がきた。そういう意味では、人間関係のない貧困がほんとうによく描かれている映画だと思った」

──あの後、あの少年はどういう生き方をするだろう?施設送りになってしまうんだろうけれど、そこから出て、強く生きるのか、逆に犯罪に手を染めていくのか。みんなが主人公の立場になったとき、あの映画以降、どう生きる?

「そのまま母親についていってしまいます。その時点で私の人生は終わってしまっているから」

──それからおうちで宿題みたいなのをやってるじゃない。そこで学校に行ってるんだということは解るけれど、先生が一度も出てこないですよね。あんな状況のときに、勉強なんかするのかな?

「あれは自主勉だと思う」

「私たちの周りにはみんな、学びたいけど学べない人もいるし」

──今の社会で自己責任ということが言われますけれど、なんでも自分でやれ、父親がいなくなっても自分で生きていけっていうことですかね。

先生「どうしたらいいかもわからない、でも生きていかなければいけないからね」

「ひとりじゃ生きていけないですけれど、もしひとりになってしまったらあまりなにも感じなくなるんじゃないかな」

──主人公は作品中2回ぐらいしか助けを求めないんだけれど、みんなだったらどうする?

「先生に助けをもとめちゃう(笑)」

「もしかしたらこういう(首都圏高校生集会のような活動をしている)バカ正直な先生がいるかもしれないじゃん」

[構成・文:駒井憲嗣]